優空が風邪で倒れた時からは、特に彼女を警戒していたと思う。
だけどそんなのは無駄でしかなくて。
心音ちゃんは俺の少しの変化にもすぐに気づいて、自分の思いを言葉にしてぶつけてくれた。
真莉愛に未練がなかった、と言われれば嘘になる。
だけど真莉愛は関係なく。
ただ本当の自分を見せるのが怖くて。
上辺だけで判断される自分に戻りたくなくて。
逃げてた俺を彼女らしい優しさで包んでくれた。
もう戻ってもいいんだよって、
俺に居場所があることを教えてくれた。
俺だって本当は分かってた。
気付かぬうちに出来ていた“自分の居場所”。
それでも踏み出す勇気がなくて、
きっと誰かの言葉を待ち続けていたんだと思う。
我慢しなくていいんだよって言われるのを。
だから正直あの時は。
あぁ、やっと居場所が出来たんだってすごく嬉しかった。
心音ちゃんが本当の俺に気づいてくれたことが、どうしようもなく嬉しくてたまらなかった。
俺が彼女に恋に落ちたのは偶然じゃなく、
必然だったんだと思う。
「すいません先輩。少し見とれてしまいました…。そろそろ行きますか?」
「ううん。もう少し見てようよ。せっかくだからさ」
「……はい」
俺はさっき手に入れたものを心音ちゃんに気づかれないように袋から取り出した。
「その前に…さ、これ」
そしてそれを心音ちゃんの首元に持っていく。
半ば抱きしめるような格好で彼女につけたそれはネオンの光でキラキラと輝いていた。