黙って俺のモノになれ【下】



「シフト、いつも一緒みてーだし」



「あ、はい…。市川汐梨(イチカワ シオリ)ちゃんも同時期に入ったお友達です。あたしも詳しくは知らないんですけど、どうやら輝さんとは遠い親戚みたいで…。あたしが採用になった事もあって“お手伝い”って形でバイトをする事になったみたいです…」



「……へぇ」



桐沢くんとこんなに話が続いたのは初めてで。


やっぱり少し優しくなったのかな…なんてぼーっと考えたりもした。














☆*☆*☆*☆*☆













「心音ちゃん!これ、4番テーブル!こっちは7番テーブルね!」



「はい…!」



バイトが始まって早1時間。


お昼も近づきお客さんも増え、息付く暇もないほど忙しくなる。


今日はいつもいる汐梨ちゃんがいないから、少しやりにくい…。


汐梨ちゃんとは2年間一緒にやってきただけあって、意思の疎通が完璧。


だけど今日は…汐梨ちゃんがいない上に桐沢くんとは初めての仕事だから、どうしたらいいのか分からなくて。


臨機応変が苦手なあたしは、手馴れた作業のはずなのにさっきから失敗ばかり。


それでも大きな失敗に発展していないのは、



「あ……っ」



「…っと、あぶね。焦んのは分かるけど落ち着け。こっちは俺が持ってく」