黙って俺のモノになれ【下】


最初はひどく混乱していた先輩も、徐々に本当の姿を見せてくれた。


その時に先輩の過去を詳しく聞いたわけじゃない。


それでも先輩が抱えているものの大きさはよく伝わった。


あの時自分がうまく喋れていたのかどうかは…正直覚えていないというのが本当。


とにかく必死で。


過去に囚われたままでいて欲しくなくて。


足りない頭で一生懸命言葉を並べてた。


後輩なのに生意気すぎたかなって不安になったりもしたけど…。


少しでも先輩の助けになれたみたいでよかったな…。



「そろそろでよっか」



「はい」



そのままお店を出ようとする先輩。



「…先輩?あの、お会計は…」



「済ませたよ。さっき心音ちゃんがトイレに行った時!」



さらっとカッコいいことをしてのける先輩。


いつもいつもスマートな対応をしてくれる。



「え、そんな!いくらでしたか?」



「いいからいいから。気にしないで」



「いくら何でもそれは…。それじゃああたしの気が済まないので。何かしてほしいことがあれば言ってください!」



精一杯の、あたしのお返し。



「じゃあさ、今日1日俺の隣から離れないで?それが俺のして欲しいこと!」



「そ、それだけでいいんですか!?」



「うん。俺は心音ちゃんがいてくれさえすればそれだけで幸せだから」



はにかむように笑う先輩。


もう、いい人すぎますよ…。