「…おいひいですっ」
「あは。それならよかった!食べすぎて喉詰まらせないようにね」
「そんなに食べすぎませんよ…!」
翔斗先輩に連れられ入ったパスタ専門店。
少しお値段は高めなんだけど…
味は期待通りのものだった。
「こんなにいいお店を知ってるなんて…さすが先輩ですね…」
「ありがとう、って言っていいのかな。実はここ真莉愛に教えてもらった場所なんだ」
申し訳なさそうな笑みを浮かべそういう先輩。
別に謝ることないのに…。
「……とは言っても1度も来れなかったんだけどね」
「そう、なんですね」
「ってごめん!こんな重たい空気にするつもりは全然なかったんだ。ほら、気にせずどんどん食べて」
「……はいっ。ありがとうございます」
翔斗先輩の第一印象は、はっきり言って悪かった。
この人には近づかないようにしよう、とか思ってたんだっけ…。
それくらい先輩はあたしの苦手なタイプど真ん中だった。
いつもいつも口を開けば女の人の話題ばかりで、一緒にいる時でさえ電話がなりやまなかった。
分かっていてもやっぱり一緒にいるのは苦痛で、正直いい気持ちはしなかった。
だけど一緒にいるうちに。
──────先輩の違和感に気づいた。
なんで気づいたのかと言われると、未だに分からない。
ただなんとなく。
……なんとなく、今ここにいる先輩は偽りなんじゃないかって思った。
聞くのが怖くなかったわけじゃない。
それでも文化祭の雰囲気か、謎の勇気があたしに湧いてきて……
気づいたら自分の思いを口にしてた。