【歩結side】
心音ちゃん…心音とショッピングモールでデートをして。
帰ろうと思い動き出したはずなんだけど…。
「もしかして…はぐれた?」
振り返るとそこに彼女がいなかった。
「……ははっ(笑)」
なんて言うか…心音ちゃんらしい。
でも、こうも言ってられない。
早く探さないと。
思えば心音ちゃんは最初から危なかしかったな。
俺ら男に対して警戒心むき出しで。
それなのに反抗できなくていつもうろたえてた。
そんな彼女を何故か放っておけなくて。
いち早く彼女の“苦手”に気づいた俺はせっかいを焼いた。
今思えば…あれさえも迷惑だったかな。
だけどそれでも守ってあげたかった。
怯えてた彼女を安心させてあげたかったんだ。
考えてみれば俺は出逢った時から彼女に、心音ちゃんに恋に落ちてたのかもしれない。
「心音ちゃん…!」
遠慮がちに、優しく笑う心音ちゃんに。
初めて俺に笑いかけてくれた彼女の顔はずっと忘れない。
忘れられない。
学校案内が終わったあと、強引すぎたかなって不安になっていた俺に。
心音ちゃんは初めて笑ってくれたんだ。
「待ってて、すぐに見つけるからっ」
それからは色んなことがあった。
彼女を好きであるのは自分だけで良かった。
だけど……
──────そうはいかなかった。