だからまさかあんなことが起こるなんて、
思いもしなかったんだ──────
「もういい時間だね。やり残したことはない?」
午後七時前。
歩結が右手につけた時計を見ながらそう尋ねてきた。
「うん、もう見たいところは一通り見たから…」
あれから、あたしの洋服を見たり彼の洋服を見たり。
寮の皆に似合いそうな服やグッズを見てみたり。
思う存分ショッピングを楽しんだ。
「そっか。じゃあ…そろそろ帰る?」
「そうだね」
2人で頷きあって、今いるお店を出ようとした時。
「…なんかすごい行列が出来てるね」
歩結のそんな声が聞こえたと思った瞬間、
押し寄せる人の波に流され、あたしは歩結とはぐれてしまった。
「う、うそ…。どうしよう……!」
今日初めて入ったから、この建物の地図も理解出来ていないあたし。
急いで歩結先輩と連絡を取ろうとしたけど…。
「こんな時に…どうして?」
携帯の電源が切れていて連絡すら取れなかった。
人の波は増えるばかりで、減る気配など一つもない。
せっかくいいデートだったのに……
あたしのせいで台無しだよ──────
ごめんね、歩結先輩…。