黙って俺のモノになれ【下】


そしてそのまま歩き出そうとした時、あることに気がついた。







………手、繋いだままだ…。




目をつぶっていたあたしを案内するから、と言って手を握ってくれた歩結先輩。


今はもう目を開けているのにその手は離れないまま。


どうしよう…。


嫌ではないんだけど、すごく緊張する…!



「あ、あの…………」



「ん?……あぁ、手繋いだままだったね」



それをどうやって伝えようか考えていると、歩結先輩がいち早くその事に気づいてくれた。







──────だけど。



「………このままじゃ、嫌かな?」



「え?」



「手。繋いだままじゃ嫌?」



先輩はその手を離そうとはしなかった。


……嫌かと聞かれれば、嫌ではない。


だけど……付き合ってもいないのに、いいのかな…?



「ははっ。困らせちゃってごめん。でも俺、今日くらいは心音ちゃんの特別でいたいんだ」



そう言う先輩の目は真剣そのものだった。



「…て言うかごめん。今日は強制。俺が勝手に決めたルールを守ってもらえないかな?」



なんだか今日の先輩はいつもより少し、強引?


でも。



「…はい。分かりました!」



いつもいつも優しく、あたしの我侭を聞いてくれる先輩。


そんな先輩のお願いを聞かないわけにはいかない。



「…うん、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」



歩結先輩は1度立ち止まり、あたしの方を向いた。



「今日だけでいいからさ、俺のこと…名前で呼んで?もちろん呼び捨てで。それから敬語もなしにしてほしい。……大丈夫かな?」



「先輩の事を、呼び捨てで…?」