「あの、先輩。実はあたしもあるんですけど…全然大したものじゃなくて…」
「…お前からならなんでも嬉しい」
遠慮がちに差し出された袋を受け取った。
「開けていいか?」
「はい…」
開けてみるとそこに入っていたのは、ライオンの小さな刺繍の入ったリストバンドだった。
「サッカーする時に、使ってもらえたらって思ったんですけど…」
「…使うよ、大切に使う。ありがとな」
これで心音からのプレゼントは2つ、か。
こんなに幸せでいいのか、俺は。
「……心音」
やっぱり俺はお前しか好きになれない。
「はい?」
だけど気持ちは押し付けたりしない。
答えを出すのは心音だ。
それでも、伝えたい想いがある。
「もう一度だけ、言わせてくれ」
「…はい」
これで、気持ちを伝えるのは最後にする。
「俺はさっきも言ったように女の事がほとんど分からない。だけどそれでも…お前が、好きだ」
お前が答えを出すまでは。
「何もしなくていい。ただ…傍にいて欲しいんだ」
だから、考えろ。
お前の全てを使って。
「心音が傍にいてくれるだけで、俺は頑張れるから」
俺はお前がどんな答えを出したとしても受け止める。
その後は特に何があるわけでもなく、寮にたどり着き。
俺と心音のデートは幕を下ろした。



