黙って俺のモノになれ【下】


歩いていると目に入ったある商品。


たくさんの種類を眺めて俺は1つに絞り、迷わずそれをレジに持っていった。



「先輩?何か買ったんですか?」



「あぁ…まぁな」



そういう心音も会計を済ませたらしく、俺たちは動物園を出た。



「楽しかったな…。先輩、本当にありがとうございました!」



「俺も楽しかった」



2人並んで駅への道を歩いた。














心音は気づいているんだろうか。


俺の首元に光るネックレスに。


このネックレスは…心音が文化祭の時にくれたプレゼント。


家に帰って封を開けた時には驚いた。


それは…俺がバザーで眺めていたものだったから。



「……あの、先輩」



それに気づいて欲しくて声をかけようとした時、一足早く心音に先を越されてしまった。



「どうした?」



「ずっと、言おうか迷ってたんですけど…その、先輩がつけてるネックレスって…」



なんだ、気づいていたんだ。


心音が知っていてくれた事が妙に嬉しかった。



「あぁ、そうだ。お前があの日くれたやつ」



「やっぱり…!」



「お前…見てたんだな、俺がこのネックレスを見てたのを」



バザーに行ったあの時、心音は買い物に行くと見せかけて俺を見てたんだ。


遠くから、バレないように。



「…バレちゃいましたか……」



恥ずかしそうにはにかむ心音。


このタイミングしかないと思い、俺は先ほど買ったものを心音に手渡した。



「…お前に似合うと思う」



俺がそう言って渡したのは、水色のうさぎの絵が施されたシュシュ。



「開けていいですか…?」



「大したものじゃないが…それでもいいなら」



そう言うと心音はすぐに封を開けた。


それを見るなり目を輝かせ



「絶対使います!ありがとうございますっ」



満面の笑みでそう言ったんだ。


何とか喜んでもらえたみたいだな。