【楓side】
「次はどこに行きますか?」
隣で楽しそうに、そう言うこいつ。
「お前の行きたいところに行こう」
「いいんですか?それじゃあ…」
マップを見ながら嬉しそうに歩みを進める心音の後ろ姿を眺め、その後ろをついていく。
“心音”と呼んでいいか…と聞いたのは俺だけど、最初は本当に緊張の連続で、上手く呼べてたかどうかも正直分からない。
けどそれでも、優空たちが呼ぶのをどこか羨ましいと思ってた。
だから…後悔はしていない。
「…ふれあい広場でいいですか?」
「……あぁ」
「先輩?ちゃんと聞いてました…?」
「悪い…。お前の事考えてたらつい」
「…っ!先輩はそういうところがずるいんですよ…」
心音が何かを言ったような気がしたけど、小さすぎて俺の耳には届かなかった。
「…もう、いいです。行きましょう…!」
何だか照れ顔の心音に疑問を感じながらも、俺はその小さな背中を追いかけた。
思えば、出会った頃はもっと遠慮してたよな。
俺らの顔もまともに見れずに、びくびく怯えてた。
そして俺もまた、優しくしようとは思ったけど特別視はしてなかった。