「…お母さんは、どうしたい?」
そんな重苦しい空気を破ったのは他でもない、あたし。
このままじゃ、まずいと思ったから。
誠二朗さんは腹を括ってあたしたちに話してくれたんだと思う。
それならあたしたちはそれに、応えるべきだと思うから。
「誠二朗さんはきっと、あたしたちがどんな選択をしても。受け入れてくれると思う。それだけの覚悟を決めてきたんだと思うよ…?」
あたしたちは子供だ。
どんな選択をしようとあたしたちは───
「……俺は、母さんについていくよ」
「…あたしも」
あたしたちにとって、お母さんは1人だから。
どんな時だってあたしたちを育ててくれたのはお母さんだから。
お母さんがどっちを選んだとしても。
あたしたちの幸せは、お母さんの幸せだから。
「わたしは……っ、誠二朗さんが大切だった。裕司(ユウジ)さんがいなくなって、辛い時に支えてくれたのは誠二朗さんだったから…っ。だけど、それでもっ…好きなのは……そばにいて欲しいのは…っ、いつだって裕司さんだったっ……!」
裕司さん、とはお父さんの名前。
分かってた。
お母さんがずっと苦しんでたこと。
あたしたちの前で無理して明るく振舞ってたこと。