【心音side】
カフェを出て、寮へ戻ると。
──────♪
お母さんからの着信があった。
「もしもし?どうかした…?」
『心音?今日、うちへ戻って来られない?』
「今日?…外出届を出せば大丈夫だけど…」
『誠二朗さんがね、話があるって…』
誠二朗さんが…?
「分かった。すぐ帰る」
電話を切ると、あたしはすぐに歩結先輩に外出届を出し寮を出た。
☆*☆*☆*☆*☆
「急に帰ってきてもらって悪かったね、心音ちゃん」
「いえ……」
家に帰ると、裕くんとお母さんと誠二朗さんは席についていた。
不思議に思いながらあたしも席につくと、誠二朗さんはお母さんの顔を見て話し出した。
「結美さん。…何かあった?」
「何かって…?」
誠二朗さんはいたって普通に、だけど何かを知ってるようにお母さんを見ていた。
「俺はさ、まだ少ししか結美さんと時間を過ごしてないけど。君に何かあったことくらいは顔を見れば分かるよ」
お父さんと会ったことが、バレてる…?
「…ごめんなさい。前の旦那に…会ったの。でもね、別にやましい事があったわけじゃ…」
「分かってるよ。結美さんはそんな事しない」
「じゃあどうして、そんな事を?」
「うん…実は俺、結美さんに言ってないことがあったんだ」
そう言って誠二朗さんがテーブルの上に出したのは、
───────婚姻届だった。
「……ど、どうして…」