桐沢くんが選んだのは…ホラー映画。


……ホラー映画?!



「桐沢くん、こういうのが好きなんですか…?」



「そーたけど」



ちゃんと確認してから口に出せばよかった…。


ホラー映画なんて怖くて見れないよ…。


だけどあたしが言い出してしまった以上、



“やっぱりあたしの方から……”



なんて言えない。


それにどのみち、この時間ならいつかは見なくちゃいけないんだし…。


覚悟を決めたあたしはDVDプレーヤーにそれを入れて、再生ボタンを押した。


15分ほどの映画予告はあっという間に終わり、本編が流れ始める。


気になって少し後ろの桐沢くんを見ると、いつもと変わらない無表情でテレビ画面を見つめていた。



「……何だよ。そんなに怖ぇのか?」



あたしの視線に気づいた桐沢くんが呆れたような声でそう尋ねる。



「…少し………」



「ならそんな前にいねーで下がれよ」



あたしは素直に後ろに下がった。














映画が始まって1時間────────


物語はだんだんクライマックスに迫ってきた。


怖すぎてさっきから内容が頭に入ってこない…!




一方桐沢くんはと言うと、1人でもくもくとテレビを………見てない。


遠慮気味に隣にいる桐沢くんを見たはずなのに…何故だか目が合った。


なんで……!


それよりも思ってたより…距離が近い…。



「あの、どうかしましたか…?面白くなかったとか…?」



「……いや。…俺さ、お前の……」



──────ドンドン



桐沢くんが何かを言いかけた時、激しくドアをノックする音が聞こえた。



「おい、入んぞ」



「あ、それ俺が見たかったやつ」



直後、朝霧くんと優空くんのそんな声が聞こえてきたかと思うと桐沢くん以外の5人がずらずらと部屋に侵入してきた。



「………何か用ですか」



「あー…湊叶、心音ちゃん。ごめんね…。こいつら行くって言って聞かなくて…」



と、申し訳なさそうな成田先輩。