【心音side】
角を曲がったあたしは足を早める。
───────行き先なんてない。
本当は、用事なんてない。
だけど。
あたしには見えたんだ。
コンビニの前にたたずむ
───────お父さんの姿が。
もう会うことなんてないって、思ってたのに…。
どうしてまた…?
だからあたしはお父さんに気づかれる前にあの場を立ち去ったのに。
──────「待ってくれ。心音!」
どうして追いかけてくるの?
どうして気づくの?
「やめてっ…!離してよ…っ」
あたしは…どうしたらいいの─────?
「心音…。ごめんな……」
そんな声で、そんな顔で謝らないでよ…!
許してはいけないって分かってるのに、許したくなっちゃうから…。
「…いやっ、聞きたくない……っ。もう…遅いんだよ………」
「分かってる。だけど…俺の話を聞いて欲しいんだ──────────」