いくら経験のないあたしでも、雰囲気で気づかないほど馬鹿じゃない。



「………俺…心音が好きだ」



彼はあたしが思った通りの言葉を口にした。


……もちろん、嬉しくないわけじゃない。


それでも…


優空くんのことが好きなのかと言われると、分からない……。


だからまだ答えは────────



「返事は、いらない。ただ伝えたかっただけだから。……帰ろう」



あたしの気持ちを知ってか知らずか、そう言葉を紡いだ優空くんはあたしに背を向け歩き出した。


そんな優空くんを追いかける様について行き、あたしたちは今度こそ寮への道を帰り始めた。


だけど……………


2人の間に






───────会話は全くなかった。














☆*☆*☆*☆*☆














結局、1つも会話のないまま歩き続け、電車を乗り継ぎ、気づけばもう桜河はすぐそこに。


あと数メートル歩けば正門が見える。


そしてその少し先で明かりを灯すコンビニエンスストア。


そこに視線を向けたあたしは足を止め、優空くんを見た。



「…すみません。少し用事を思い出したので先に帰っててもらっていいですか?すぐに帰るので…」



「……うん?分かった。じゃーな」



優空くんが再び歩き出したのを見たあたしは彼に背を向け、再び暗闇の中へ戻った。