黙って俺のモノになれ【下】



「何かこれ、絶対違うとこ向かってるよね。俺ら」



水族館を出ても、やっぱり人は多くて…。


とりあえずこの人の波の中に紛れてたら駅にたどり着けるかな、と思って歩いてたんだけど…。


どうやら違う道に迷い込んでしまったみたいで、周りを見るもそこにいるほとんどがカップルだった。



「はい…そうみたいですね……」



後ろには小さく見える水族館。



「ま、ここまで来たしちょっと行ってみよーよ」



「で、でも…」



「大丈夫だって、見たらすぐ帰るから」



「分かりました」



あたしだって、もちろん気にならないと言えば嘘になる。


だけどこんなに多くのカップルたちが行く場所って一体───────?







「うわ…ここ、こんな場所あったんだ…」



思わず優空くんが声をあげたその場所。


そこは眺めのいい、小さな丘の上だった。


夜だからか、ここから見える景色はとっても綺麗で、あたしも優空くんも言葉を失った。



「…あ、あれ桜河(オウガ)じゃない?」



そんな中、沈黙を破ったのは優空くん。


その指差す方向を見ると大きな桜河の建物と、その横にたたずむ小さなコンビニの光があった。






─────『───────みお?』



瞬間、蘇るあの日の記憶。


あの日から…もう1ヶ月が経つんだ…。


文化祭の日の夜、あたしはあの場所で……


お父さんに会った。