【透瑠side】




「透瑠先生。2年半、本当にありがとうございました」



転入時、学園唯一の女子だと学校中を騒がせた心音も今日で卒業。


俺は結局3年間、彼女の担任を務めた。



「2年半ご苦労さま。無事卒業出来て良かったな」



ポンっと頭を撫でると隣の湊叶はわかりやすく顔をしかめる。



「湊叶も、おめでとう。そんな露骨に顔に出すと嫌われるぞ(笑)」



湊叶と心音は今や学校公認のカップルだ。


喧嘩とかも沢山してたみたいだけど、まぁ順調らしい。


若いっていいな(笑)



「…別に、先生相手に嫉妬とかしないですけど」



「はは。そりゃ失礼しました(笑)」



手を繋ぐ2人とそれを囲むように並ぶ昨年の卒業生を合わせた特別階5人の後ろ姿を見届け、俺は教室の施錠をするため校舎に戻った。














☆*☆*☆*☆*☆*☆














卒業式は何度も経験してきたが、やっぱり何回目でも自分の可愛い生徒を送り出すのは寂しい。


心音の護衛を任せた6人全員がこの学校の卒業生となった今、問題児がいなくなりほっとしたような、でも心にポッカリ穴があいたような、そんな複雑な気持ちだな…(笑)



《3年A組》と書かれた教室の前にたどり着いた時、



「はぁ~、この教室とももう会えねぇのかぁ」



そんな声が聞こえ、俺は咄嗟に身を隠した。


中を除くとそこには男子生徒が4人。



「3年間、あっという間だったよね」



「うん。特に、心音が来てからの2年半は本当早かった」



「色々あったな」



中込 玲弥、溝口 慧、橘 真人、芹沢 春樹。


この4人も今日ここを巣立った卒業生だ。