「あぁ、そーだけど?どーすんだよ、心音」
お母さんたちとはいつ話したの?
いつから保育士の仕事探してくれてたの?
聞きたいことなんてまだまだ沢山あるけど。
それでもあたしの答えなんて一つしかない。
──────「…行くに決まってるっ……」
収まりかけた涙がまた溢れた時。
湊叶の唇が優しくあたしのそれに触れた。
「絶対お前を離さねぇから。覚悟しとけ」
瞬間、いろんなところから沢山の冷やかしの言葉が聞こえたけど。
そんな皆のひやかしなんて気にならないくらい、
あたしは自分の赤い顔を隠すのに必死だった。
あたしたちは未熟だ
だからこそ失敗をする
でも、失敗を恐れる必要は無い
それを含めた経験はいつか自分の力になるから
初めから完璧な人なんていない
誰だって後悔や苦しい過去を抱えてる
それでももがき、強くなろうとした人が
完璧と、そう呼ばれるようになる
誰にだって可能性はある
だからあたしは何があっても
前に進む勇気を忘れない
桜河に来てよかった
沢山の仲間に、友達に出会えてよかった
玲弥 慧 真人 春樹
歩結先輩 楓先輩 翔斗先輩
奏夢くん 優空くん
ここで出来た絆は絶対に忘れない
忘れられないあたしの宝物───────
なにより、湊叶に出会えてよかった
「心音~、湊叶くんが待ってるわよ~っ」
「早く来いよ。おいてくぞ」
「あ、待ってよ。湊叶!!」
卒業式の日、皆で撮った写真を胸にあたしは湊叶の元へ駆け出した。
たくさんの経験を胸に
あたしは今日も
一歩を踏み出す────────
【完】