───「大事なとこでわりぃ」
玲弥たちと別れを惜しんでいるさなか、後ろからそんな声と共に腕をひかれた。
相手は見なくても分かる。
「…湊叶、」
「お前さ、勝手に消えんなよ…」
「勝手に消えたわけじゃないよ…ちゃんと言ったもん」
あたしは今怒ってるんだからね…!
「心音ちゃん、もしかしてまだ…?」
もちろん、この事は玲弥たちにも相談済み。
心配そうな玲弥に苦笑をうかべると同じように玲弥も笑った。
「最近お前機嫌わりぃな。なんかあんなら言えよ。じゃねーと俺も分かんねーし」
「おかしいって…それは湊叶のせいじゃん。県外に行くって言うのにあたしばっかり寂しいみたいで…」
気持ちは分かっててもやっぱり言葉にしてくれないと不安。
そう口にする前にあたしは湊叶の胸に抱き寄せられた。
「ちょ、ちょっと…人の話、聞いてた?」
「…だから勝手に消えんなっつったんだよ」
「え…?」
「だから。俺について来いって」
ついて来いって一体どーゆーいみ…?
「そんなの、出来るわけないじゃん。就職先だって決まってないのに…」
「保育士。まだ諦めたくねーんだろ?あっちでお前に最高の就職場所を探してやった。お前の両親にももう承諾は得てる。後はお前が決めろ」
保育士の仕事。
それはあたしがおうちのためを思って諦めた職業だけど…。
「まって、あたし大学に通うお金なんて…」
「ったく、1回で聞け。大学じゃねーよ。就職場所っつったろ。俺が住む部屋の管理人の奥さんがたまたま保育士で、ダメ元で事情話したら働きながら資格取らせてくれるってさ」
「ちょっとまて、湊叶。お前それって…」
「「「同棲…………!?」」」
いつの間にか駆けつけていた翔斗先輩たちの言葉にやっと事態を把握する。