もちろん、あたしが好きなのは顔だけじゃないけど。


それでも湊叶くんの容姿がいいのは本当。


付き合ってからは笑顔もよく見せてくれるようになったんだけど…。


デートの時はますます女の子の視線を浴びるから、ちょっとだけ複雑だったりもする。


彼には内緒だけどね。



「ったく、まだ分かってねぇのかよ…。俺だってヤキモチくれぇやくし、そもそも他の女なんか興味ねぇよ」



「分かってるけど…それでもヤキモチやいちゃうんだもん。それに、心配しなくても大丈夫だよ?あたしには湊叶くんだけだから」



この先きっと、彼以上に好きになれる人は現れない。


そう思えるほどあたしは彼に溺れてる。



「あんま可愛いことゆーな。抑えらんなくなるだろ。つか俺も…心音だけだから」



そう言い湊叶くんはあたしを優しく抱きしめた。


やっぱりあたしの居場所はここがいい。


そう再確認した気がした。



「それとさ、そろそろその『湊叶くん』ってゆーのやめねぇ?呼び捨てで呼べよ。心音」



「そ、それは……」



あたしもいつかはって思ってた。


でも急に言われると恥ずかしくて呼べないよ…!



「なんだよ、呼べねぇのか?中込たちは呼び捨てで呼んでるっつーのに?」



たしかに、それを言われると何も言えない…。



「呼べないわけじゃないよ。ただ、その…恥ずかしくて…っ」



「悪ぃ、意地悪言いすぎた。けど、俺も心音に呼び捨てで呼んで欲しい」



湊叶くんはいつもずるい。


そんな風に言われると断れないし、気持ちに応えたいって思っちゃう。



「…み、湊叶…」



あたしは勇気を振り絞って小さく、そう彼の名前を呼んだ。



「…聞こえねぇ」



「湊叶…」



少し意地悪な彼の名を今度ははっきりと呼んだ。


それでもまだ気がおさまらないらしく。



「もっと」



「湊叶、湊叶、湊叶…!」