【心音side】
それから時が過ぎること数ヶ月。
桃色のさくらが満開に咲き誇る季節─────
あたしたちは2年生に、
歩結先輩たちは3年生に進級した。
「湊叶くん!おはよ」
「ん…はよ」
あれからというもの、皆との関係性は何ら代わり映えはない。
だけど全く変わってない、と言えば嘘になるかな。
たとえば……
翔斗先輩が普段から素を出すようになったこと。
奏夢くんが授業をさぼらなくなったこと。
優空くんの仕事が忙しくなって最近はほとんど会えていないこと。
歩結先輩が生徒会長に正式に任命されたこと。
楓先輩がサッカー部のキャプテンに抜擢されたこと。
湊叶くんが日に日に甘さを増していること。
それでもあたしたちの関係には全く変わりはない。
優空くんは相変わらずトランプが苦手だし。
楓先輩や歩結先輩は未だに奏夢くんたちに手を焼いてるし。
湊叶くんだってやっぱり人には少し冷たい。
そしてあたしはそんな代わり映えない毎日を過ごせることがすごく幸せだと思ってる。
皆と出会ってまだ1年が経ってないなんて思えないほど、ここに来てからの時間は本当に濃かった。
「クラス替え、どうなってるかな?」
「さぁな。こればっかりは俺たちもどうしよーもねぇから」
「もぉ、湊叶くん冷たい…」
「何でだよ。何勘違いしてんのか知らねーけどさ…俺は心音と一緒がいいと思ってるけど?」
新学年始まりの今日は、2クラス構成のあたしたち普通科だけクラス替えがある。
他に変わることといえば階数だけ。
「湊叶くんのバカ。あたしだって一緒がいい…」