「じゃあ、湊叶。お邪魔しました」
「ご飯もご馳走様。また皆で集まろうね」
歩結先輩、翔斗先輩に続いて皆ぞろぞろと部屋を出ていく。
「あれ、心音帰んねーの?」
部屋を出ようとしないあたしに疑問を持った優空くんがそのまま投げかけてくる。
「あぁ、まだちょっと話してーことあるから」
「…ふーん。何でもいいけど」
今でも納得いってないような優空くんは少し不貞腐れたようにそう言う。
「優空くん…また遊ぼうね」
「2人でなら、ね」
「…優空」
「分かってますよ、楓さん。冗談です。湊叶、心音、おやすみ」
皆を見送り、あたしたちは再び部屋へ戻った。
「湊叶くん?それで話って…」
「別に、大した話じゃねーんだけど。心音と付き合えることになった初日だしちゃんと言葉にしといた方がいいかなって思うことがあるから残ってもらった。ただ…疲れてんならもう送る。どーする?」
湊叶くんなりにたくさん、考えてくれてるんだ…。
「あたしは全然、大丈夫だよ。聞かせて欲しいな…湊叶くんの話」
返事を聞くと、座り直した湊叶くんは話を始めた。
「…正直、心音が俺を選んでくれるなんて思ってもなかった。たぶんあいつらの中で1番覚悟決めてたのは俺だと思う。俺より良い奴ばっかだし、何より皆お前を大切に思ってる」
静かに言葉を続ける湊叶くんの声に耳を傾ける。
「俺、最初はお前のことなんて何とも思ってなかった。むしろまた女かよってそればっか考えてた。だけど…お前と過ごすうちに俺が俺じゃなくなってる気がして、けどそれを認めたくなくて。すげぇ葛藤してた」
あたしたち、最初の印象はきっとお互いに悪かったよね。
「あたしも、湊叶くんと同じだよ?最初は湊叶くんの事が本当に怖くて。近寄りたくないってずっと思ってた…」