黙って俺のモノになれ【下】


そんな優しすぎる誠二朗さんにあたしはどうしても聞きたいことがある。



「後悔は、ないんですか…?」



誠二朗さんが切り出さなければ今だってお母さんと一緒にいられたかもしれない。


それでも誠二朗さんは話をきりだした。


その事に後悔はないのかなって…。



「もちろん、ないと言ったら嘘になる。だけど自分のした行動を間違いだったとは思っていないよ」



そうはっきりと言ってのける誠二朗さんを心から強い人だと思った。



「仮にもし今も切り出さずにいたとして、それでもモヤモヤはどうしても残ってしまう。あの時こうしていればよかったなんて後悔はしたくなかったんだよ」



お母さんが幸せならそれでいいんだ、とでも言うような誠二朗さんにはかける言葉も浮かばなかった。


ただひたすら、大人は素直なだけじゃいられないんだと嫌でも思い知らされたような気がした。



「心音ちゃんや裕汰くんにはまだまだたくさんの可能性が広がってる。この先何度も壁にぶち当たることがあると思う」



それでも…と誠二朗さんは言葉を続ける。



「どんな時でも後悔のない選択をして欲しい。それがどんなに辛い選択だったとしても、自分が信じた道を進んでいってほしい。君たちの人生はまだまだこれからだ。何かを諦めるには早すぎる」



その言葉は今のあたしの胸に大きく響いた。



「これだけは伝えたかったから。また2人に会えてよかったよ」