母さんが死んでから、初めてだったんだ。
俺を他人と平等な目線で見てくれようとした女は。
だから俺にとっては心音しかいねぇ、そう強く思った。
「だいたいさ、てめぇは生意気なんだよ。ビクビクしてる割には言いてぇことは言ってくるし反抗してくるしなっ!」
「うっ、ごめん……」
「けど、だからこそ。お前しかいねぇんだよ、俺には」
ライバルは多いかもしんねぇし、手ごわいかもしんねぇ。
けどそんな事俺には関係ねぇ!
「奏夢くん…ありがとう」
俺だって心音が好きなんだ。
好きになったからには手に入れてやる。
「お前、俺以外を選ぶとかどーなってもしらねぇからな。覚悟しとけよっ」
先輩だとか、んなことしらねぇ。
俺だって心音が欲しいんだ。
これほどに好きになれる女なんてきっと、一生現れねぇと思う。
それくらいに俺は本気だ。
「それは、答えられないけど…。あたし皆の想いを無駄にしない。精一杯考えるから…!」
この想いが届いてくれんなら、今はそれでいい。
俺の隣にはお前しかふさわしくねぇんだよ、心音。
「しゃーねぇな。早くしろよ、ノロマ」
そう言い俺は立ち上がり海の方へ向かった。
──────母さん、聞こえてるか?
俺、やっと大事にしてぇ女と出会えた。
父さんと母さんの秘密の場所に連れてきちまってわりぃな。
けど、見守っててくれ。
ぜってぇ振り向かせてみせるから────