「だろ?!」
「うんっ」
あたしたちは2人、1キロ近くありそうな橋に足を踏み入れた。
途端に揺れる今にも落下してしまいそうな吊り橋。
………怖い、かも。
そんなあたしに比べてずんずんと進んでいく奏夢くん。
あたしの恐怖も知らないで揺れ続ける容赦ない橋。
どうしよう、最後までたどり着けるかな…。
でも、頑張らないと。
せっかく奏夢くんが考えてくれたプランなんだもん…!
必死に足を進めていくも思うようには進まず、奏夢くんとの差はどんどん開いていく。
早く追いつかないと…。
出来るだけ下を見ないように、ただ奏夢くんの背だけを見つめて歩く。
そんな時、振り返った奏夢くんはこちらへ逆戻りしてきた。
「どうしたの?奏夢くん」
早足であたしの目の前に立った奏夢くんはそのままあたしの右手を取った。
「こえーんだろ。仕方ねぇから俺が引っ張ってってやる」
「どうして…」
「遠くからでも分かるくれぇにお前震えてんだよ!そんなんで俺の目がごまかされるとでも思ってんのかっ」
「うっ…ごめん、なさい…」
強引で怒られてるかのような言葉を並べる奏夢くんだけど、あたしの手を引くその左手は言葉とは裏腹にひどく優しい。
「俺がいてよかっただろ?」
「うん…。本当にいてくれてよかった」
あたし1人じゃ渡りきれないこの橋も、奏夢くんが引っ張ってくれるなら渡れる気がしてくるから不思議だ。



