「ふふ。ありがとう」



「何がおかしいんだよ?」



「ううん!何でもないよ」



「のろまのくせに生意気だな。まぁいい、行くぞ!」



「あ、ちょっと待ってよ!奏夢くん…っ」



そそくさと歩き出す奏夢くんを追いかける。



「寒くなってきたね…」



「もう冬だからな」



「冬かぁ…」



なんだかんだで桜河に来て半年が経つんだな…。


最初は上手くやっていけるかどうかさえ不安だったのに………不思議。


ここで上手くやってこれたのは、間違いなく寮の皆や玲弥たちのおかげ。


本当に言い表せないくらい感謝してる。



「冬が、何だよ?」



「ううん。ここに来て半年が経つんだなーって思っただけだよ」



「そー言えばそうだな。心音もここに来て半年か。俺のおかげで最高に楽しかっただろ?」



いつだって自信満々の奏夢くん。


最初はこの強引さに上手く打ち解けられなかったんだよね…。



「うん、そうかもしれない」



「あったりめぇだろ。俺を誰だと思ってんだ」



「朝霧奏夢くん」



「んなこと分かってんだよっ」



「ふふっ」



入学当初、1番印象に残ったのは奏夢くんで。


同時に1番対応に困ったのも奏夢くんだった。


出会った時からたくさん話をかけてくれたことはすごく助かったんだけど…


奏夢くんは見ての通りすごく俺様でマイペースで、強引で。


ただでさえ“男子”ってだけで怯えていたあたしには奏夢くんと会話をすることも簡単にはできなかった。


透瑠先生があたしのトラウマを聞いて急遽考えてくれた交代制監視役。


そのトップバッターも奏夢くんでいきなり部屋に入られた時は本当に心臓が止まるかと思ったな…。