「ほら、ぼさっとしてねぇで席座るぞ」
「……もう…」
と言いつつとぼとぼついてくるこいつは、やっぱりお人好しっつーか。
結局断れねぇんだ。
それ分かってやってる俺は相当意地悪なのかもしれねーな。
「怖かったら目瞑っとけ」
「それは…少しもったいない気もする…」
「…ふはっ。何だよそれ」
バイトに一緒に行った日は珍しくミスが目立った心音。
緊張してたのかもしんねーけど、さすがの俺も少しだけ焦った。
けど、昼も越えると慣れてきたのか完璧な仕事っぷりを発揮してて。
…さすがだなって思った。
俺よりだいぶキャリアも長いし当たり前なんだけど。
何でそんなにスイッチが入ったのかは俺でも分かんねぇ。
とにかくまぁ、こいつは出来るヤツだった。
「わっ、こわ……」
無意識なのか俺の方に身を寄せてくるこいつ。
役得だけど…それ以上こられると困る。
俺だって一応お前を好きなうちの一人なんだっつーこと忘れてんじゃねぇの。
「お前さ、分かってんの?」
「…え?」
「…困んだけど」
少しだけ火照った顔を見られたくなくて顔を背けると、何となく勘づいたようで…。
「…っ、ごめんっ…」
照れたように顔を背けた。
…ったく、天然すぎんのも問題だな。
「…………っ」
それでもやっぱり怖いものは怖いみたいで。
俺に言われたからか距離を縮めることはなくなったけど…。
…………見てらんねぇ。
「湊叶くんっ…!?」
仕方なく俺は小刻みに震えるこいつの小さな右手を握った。
「こえーんだろ。少しはましかよ?」
「うん…。ありがとう……」
「別に……」



