黙って俺のモノになれ【下】



「ほら、ぼさっとしてねぇで席座るぞ」



「……もう…」



と言いつつとぼとぼついてくるこいつは、やっぱりお人好しっつーか。


結局断れねぇんだ。


それ分かってやってる俺は相当意地悪なのかもしれねーな。



「怖かったら目瞑っとけ」



「それは…少しもったいない気もする…」



「…ふはっ。何だよそれ」














バイトに一緒に行った日は珍しくミスが目立った心音。


緊張してたのかもしんねーけど、さすがの俺も少しだけ焦った。


けど、昼も越えると慣れてきたのか完璧な仕事っぷりを発揮してて。


…さすがだなって思った。


俺よりだいぶキャリアも長いし当たり前なんだけど。


何でそんなにスイッチが入ったのかは俺でも分かんねぇ。


とにかくまぁ、こいつは出来るヤツだった。









「わっ、こわ……」



無意識なのか俺の方に身を寄せてくるこいつ。


役得だけど…それ以上こられると困る。


俺だって一応お前を好きなうちの一人なんだっつーこと忘れてんじゃねぇの。



「お前さ、分かってんの?」



「…え?」



「…困んだけど」



少しだけ火照った顔を見られたくなくて顔を背けると、何となく勘づいたようで…。



「…っ、ごめんっ…」



照れたように顔を背けた。


…ったく、天然すぎんのも問題だな。



「…………っ」



それでもやっぱり怖いものは怖いみたいで。


俺に言われたからか距離を縮めることはなくなったけど…。


…………見てらんねぇ。



「湊叶くんっ…!?」



仕方なく俺は小刻みに震えるこいつの小さな右手を握った。



「こえーんだろ。少しはましかよ?」



「うん…。ありがとう……」



「別に……」