「おまえ、最近どうした?」


「え?」


「え? じゃねぇよ。おまえ、部活行きたくないんだろ?」


私は、「あ......」と、消えるような声で言い俯いた。



「何に悩んでんのか知らねぇけど、もう一度自信持ってやってみたら?」


「.........」


「俺、好きだよ」


コウちゃんが、私の手にサッカーボールを持たせた。


サッカーボールも月明かりに照らされ、グラウンドの土がついているのが見える。


「莉子がトランペット吹いてる姿」


......コウちゃん。


「最後なんだしさ、やってみろって、全力で」


コウちゃんは、無表情でそう言った。

無表情なのに、言葉は優しい。


不器用に見えるけど、実はそうじゃないコウちゃん。


わざわざ練習に付き合ってくれて、おまけにアドバイスまでくれて。


おかけで、少しだけ。本当に少しだけだけど、サッカーも、出来そうな気がしてきたもん。


もしかしたら、部活もうまく行くんじゃないかって。


確信はないけれど、コウちゃんと話していたらそう思える。


コウちゃんは、不思議な力を持っている。