それなのに、私ときたら何をしているんだろう。 先輩だと言うのに、気の抜けた返事しか返せないなんて。 それに、今の私は何かがダメだ。 気合いが入らない。 トランペットの音色がすごく好きで始めたはずなのに、今は何だか、彼女のように目を輝かせて心から好きですとは、言えないような気がする。 私は、楽器を片手に非常階段の踊り場に向かった。 本当は、空き教室に集まって、先生が来るまでの時間、パート練習をしなければならないのだけれど、今は、誰もいない非常階段でトランペットと向き合いたかった。