白い雪が降り積もるように



そこには私より少し前に入ったという使用人の男の人が立っていた。




「依良様……」




抑揚のない声で蓬條依良を呼んだ彼は何処に隠していたのか、ナイフを取り出した。





玖下さんは反射的に近くにいた紗也様を守るように立った。




蓬條依良は名前を呼ばれても顔をあげることなく、本を読んでいる。





「お前がいなくなれば、蓬條は衰退する!死ねぇええぇ!!!!!」




「お兄ちゃん!」




「依良様!」




紗也様と玖下さんに名前を呼ばれて、顔を上げた時には男は彼の目の前にいた。





──このまま見ていれば、蓬條依良は刺される。





蓬條依良が死ぬなら本望だ。




でも──。




考えが早いか身体が早いか、私は気付いたときには走り出していた。