「ごめんな、冬雪(フユキ)……」 生気のない目で私を見ると、お父さんはその輪を首にかけて、柵の上に立つ。 もうお父さんが何をしようとしているか分かった。 止めたいけど、身体は動かない。 「お父……さ、ん……」 もう一度呼んだ直後、お父さんは柵から飛び降りた。 重力に逆らえずに下に落ちたお父さんの身体は首に巻かれた縄によって床には落ちず、宙をブラブラと揺れていた。 人とは思えぬ姿で──。