白い雪が降り積もるように



でも、私は殺したいくらい憎んでいた彼を今では殺せないし、殺そうとも思わない。





だから、この彼を想う気持ちだけは白く染めるのは不可能のようだ。





「ぎこちない呼び方……」





つい、口に出してしまった本音に、彼は「慣れてないんだよ、君の名前を呼ぶの….」と照れたように私の頭に額を乗せた。




そのぎこちなさも好きだ。





「それで、これからどうするの?」





とりあえず、彼が来たいと言った東北までは来た。





でも、何か頼りがあったわけでも無さそうだし、彼をどうするつもりなのだろうか?




私の問いに、蓬條依良は何も答えない。




答えない代わりに、私を抱き締めてくれる腕が緩んだ。





不思議に思って彼の方を見ると、彼は悲しげに笑っていた。