「玖下さん、毎日弟さんの夢を見るんですか……?」
「……本当に君は聡いね」
玖下さんの言葉が私の問いかけに対する肯定なのだと分かった。
悲しそうに笑った彼はポツリと口を開いた。
「君は依良の過去を聞いたんだよね?」
「はい」
「なら、僕の正体も弟のことも知ってるってことで良い?」
「……勝手に聞いてすみません」
「依良の過去を聞いた時点で、僕の正体や弟のことを知るのは必然だよ」
玖下さんはクスリと笑うとナイフを折り畳み、ポケットにしまうと左腕をストールで押さえている私の手を離させた。
そして、その傷を隠すように袖を下げる。



