白い雪が降り積もるように



その彼の顔に私は息を飲んだ。




何故なら、彼が泣いていたから──。




「何故泣いて──っ!?」




問いかける前に彼の腕が目に入り、目を疑った。




玖下さんの右手にはナイフが握られていて、その反対の左手……左腕にはいくつもの切り傷が出来ていた。




私は玖下さんに駆け寄り、左腕を掴んだ。





切り傷は血が滲むものからシミのように残るもの、みみず腫のように残るものと様々だった。




でも、その傷は玖下さんが故意的につけたものに間違いはなかった。





「玖下さん、これは……」




玖下さんの顔を見上げると、彼は涙を流したまま視線を反らした。




私は羽織ってきたストールで玖下さんの腕に出来たばかりの傷を押さえた。




普通なら押さえているのだから痛みに顔をしかめてもおかしくないのに、彼は何とも言わない。