「……紗良、君は《あの事件》から変わってしまったね」




彼の呟きに、紗良はティーカップをソーサーにおくとクスリと笑った。




「……息子までも道具として扱う妻を軽蔑するか?」




達也は何も答えない。




その代わりに紗良を優しく抱き締めた。




それが彼の答えだった。




「面白いものを見せてくれよ、《篠原冬雪》……」




そう呟き、目を細めた彼女の視線の先のパソコンには息子の世話係になった《男》の個人データがある。





《男》と性別と名前をを偽ってまで敵の中に入り込んできた度胸のある娘。





その娘のこれからの行動が紗良は楽しみで仕方なかった。




例え、息子が命を落としても──。