その後、休憩室を出た私はそろそろ蓬條依良が帰宅する頃だと思い、彼の部屋へと向かった。
長い廊下を歩いていると、向こう側からあの女が歩いてきた。
特に話す会話はない。
でも、一応主ではあるから足を止め、義務的な会釈をする。
「……蓬條への復讐はいつするんだ?」
蓬條紗良は前を通りすぎる間際に足を止め、小声でそんなことを問うてきた。
蓬條への復讐なんていつでも出来る手はある。
──と言いたい所だが、言えなかった。
復讐をしようと思うと蓬條依良に惑わされ、それを揺るがされる。
私の意志が弱い訳じゃないのに……。
それ以前に、やはり蓬條紗良にも私の目的がバレていたようだ。
最初からバレていたような気はしていたけどね。
でも、此処は人目があるかもしれないからしらばっくれることにしよう。



