もう何が本当なのか分からない。




誰か、助けて……。




「篠田君……?」




この声は……。




涙で滲む視界には蓬條良威と瓜二つの姿をした男がいる。




本名を知っててもそれで呼ばない彼。



「蓬條……依良……」




私が憎む男であり、私を憎んでいるかもしれない男。





そんな彼に私は手を伸ばした。




まるで、助けを乞うかのように。




でも、その手は差し出された彼の手を掴む前に身体と共に床へと落ちていった。