膝が今にも崩れ落ちそうだ。
蓬條依良の言葉が脳裏にこびりついて離れない。
彼を殺そうとした男の会社を潰して、その娘を彼の傍におく……。
どう考えても、会社を潰された男はお父さんで、その娘は私だ。
お父さんが昔、蓬條依良を殺そうとしていた──?
そんなはずはない。
だって、お父さんは──。
ふと、歩く足を止めた。
「私……、お父さんのこと何も知らない……」
そう、私は娘なのにお父さんのことは何も知らなかった。
知っているのは施設育ちで、空手の有段者で会社を経営していたということだけ。
その会社でさえも何の会社なのか教えてもらえず、聞いたときは「ただのIT企業」と濁された記憶がある。



