「玖下、殺すな」




首に手をかけられているのに、平然としている蓬條依良は背後から殺気を放ってくる人物──玖下さんを牽制する。




首筋からヒヤリとした感覚がなくなるが、殺気はまだ感じられた。




でも、私は蓬條依良を押し倒したまま首にかけた手は離していない。




恐らく、このまま首を締めれば、私は玖下さんが握る得物の餌食になるだろう。




それでも──。




「もう全て知っているだろうけど、アンタの母親にうちの家族は滅茶苦茶にされた。直接的な恨みはアンタには無いけど、蓬條への復讐の為に死んでもらう」




首にかける手に力を込める。




彼は命乞いするだろう。




誰だって死にたくはないはずだ。




命乞いをしても私はその手を緩めるつもりは無かった。




さあ、苦痛に顔を歪めながら命乞いしろ……。