「気にしなくて良いよ。あれは良威が悪い。だから、君が殴られるのはおかしいと思って庇っただけだから」




まあ、挑発したのは私なんだけどね。




そういえば、蓬條良威はどうしたのだろうか?




彼も母親に殴られて、口の端を切っていた。




推測だが、蓬條良威の怪我の治療は誰もしていないはずだ。




……今、私が行けば、彼をこちら側へ引き込めるかもしれない。



「あ、あのっ!」




ちょうど蓬條依良の怪我の治療を終えて救急道具を片付けている玖下さんに声をかけた。




「それ、お借りしても宜しいですか?」




「構いませんが、何にお使いに?」




「良威様も怪我をなさっていたようなので……」




そう言うと、玖下さんは呆れたようにため息を吐いた。