好きになれとは言ってない

「航さん、あれ、そろそろ連れてかないと、このまま酔い潰れて終わりますよ」
といつの間にか側に居た祖父が、いつもと同じ温厚な笑みを浮かべて言ってくる。

 常日頃から笑っているので、むしろ感情が読みづらいというか。

 この人も、あんな恐ろしい嫁をもらって、人生どうなのだろうかと子ども心に思っていたのだが、これはこれでいいのだろうな、と今は思えた。

 祖父に頷き、航は、遥たちに向かって歩き出す。

「おい」
と遥の腕を引っ張った。

「いつまで呑んでんだ。
 行くぞ」

「へ? 何処へですか?」

 此処へ腰を据えて呑む気満々だったな、こいつ、と思いながら、
「ドームに行くんだろ」
と言うと、

「ああ、そうだ。
 私、ドーム見に来たんでしたよ、お義母さん」
と遥はケラケラと笑い出す。

 ドームを見にじゃなくて、星を見にだろうが……。