好きになれとは言ってない

 



 いろいろと気づまりだろうから、早く連れて出ようと思ったのに。

 航は、千佐子たちと盛り上がっている遥を遠くから眺めていた。

 帰る気あるのか、こいつは。

 このまま、ホームパーティ楽しかったです、で終わる気か?

 しかし、せっかく話が弾んでいるのに、

 というか、酒が進んでいるのに止めるのも可哀想な気もして、静観していた。

 もっぱら、しゃべっているのは、遥と千佐子と真尋だ。

 ところどころ聞こえてきたのは、いつか聞いた気がする話だ。

「……二本っ! って言って、指を二本突き上げたらですね……」

 その話、その表情で頷くところだろうかと、時折、重々しく頷いている清乃を見る。

 だが、なんとなく楽しそうにも見えた。

 家族にしかわからない感じの表情の変化だが、遥は既にそれを読み取っているようで、盛んに清乃にも話しかけている。

 酒の力もあってのことだろうが、もう緊張している風にはなかった。