本格的にクリスマスが近づいてきていたが。

 遥たちは、たまに二人で食事をしたり、本の貸し借りをしたり。

 亜紀たち曰く、
「高校生?」
と言われるようなお付き合いをしていた。

 その日も、遥は書店で時間を潰し、航を待って、一緒に電車に乗ることにした。

 このところ、航は元気がなく、一緒に居ても、何処か上の空だった。

 やっぱり、様子がおかしいです、と遥は思う。

 さっき、あまりに元気がないので、親戚のみんなで旅行に行ったときの話をしてみたのだ。

「それで、ドライブインで休憩したとき、自販機の前に居た私に、お母さんが、ジュースを買ってくれって言ってきたんですよ。

 私が、何本? って訊いたら、お母さんが、

二本っ! って言って、指を二本突き上げたんです。

 そしたら、その指が、後ろから来た若い男の人の鼻に、ずぼっ、と刺さっちゃって。

 男の人は、どうしていいのかわからなかったらしく、鼻に指を刺されたまま、そのまま、じっとしていました。