好きになれとは言ってない

「いや、ああいいう状況になるのは、正月かな、と思っていたから、一足先に正月が来て終わった気分だ」

 なんの心構えもないうちに、と言うと、
「す、すみません」
とまた謝られてしまった。

 いや、だから別に嫌ではなかったんだが、と思いながら、まだ俯きがちに恐縮している遥の顔を見る。

 ……キスくらいはいいのだろうか。

 妊娠しないし。

 そのくらいで汚されたなんて――。

 いや、父親の立場なら言うかな。

 でも、キスなら、もう何度かしてるし。

 今日は酒にも付き合ったし、いいですよね、お父さんっ、と思う頭の中では、あのやさしそうな笑顔で遥の父が微笑み、頷いていた。

 いや、実際に許可を求めたら、いいなんて言うはずはないのだが……。

「遥」
とその両肩に手を置くと、遥がビクッとして後退した。

 一歩逃げるので、一歩追う。

「遥」

 また逃げるので、また追った。

 まるで下手なダンスのようだ、と思いながら、そのまま遥を壁に追い詰める。