好きになれとは言ってない

 同じように、父親の寝姿を見て、しんみりしている遥を見下ろしたとき、姉が言ってきた。

「航さん、代行来るまで、遥の部屋にでも行ってたら?」

 え。

「もしかして、まだ入ってないんじゃない?」

 ああ、そうね、と母親も同意してくれる。

「せっかく送ってきてくれたのに、ずっとお父さんに付き合ってくれてたものね。
 じゃあ、代行来たら、呼んであげるから。

 二人でゆっくりしてたら?

 ……遥?」

 ちょっと青褪めてる風な遥の顔を見て、母親が言う。

「……あんた、また、部屋散らかしてるんじゃないでしょうね」

「だ、大丈夫。
 だいたい……」
と言いながら、何故かすがるように袖をちんまり、つかんできた。

 お前、俺に汚い部屋を見られるより、母親に叱られる方が怖いのか、と思う。

「もう、どんだけ汚してんのよ。
 見せてご覧なさいっ」
と母親が行こうとする。