好きになれとは言ってない

 確かにこのシーズンはなかなか捕まらないからな、と思っていると、先にお茶を飲んでいた隆弘が、
「でも、お義父さん、普段は此処まで呑まないんですよ。
 航さんと呑めて、嬉しかったんですかね?」
と笑って言ってきた。

 そこで、遥の姉が、
「嬉しいのもあるだろうけどさ。
 これで、遥も嫁に行くのかと思って、寂しいような、ホッカリしたような気持ちなんじゃない?

 私のときとは、また違うわよ。
 これで、娘全部居なくなっちゃうわけだからさ」
と言った。

 そうか……と遥の父を振り返る。

 せっかく育てた娘を全部他所の男に持ってかれて、無念なような、子育てをやり遂げたような、そんな気持ちなんだろうな。

 いつか自分にもそんな日が来るのかもしれないと、寝ている遥の父の顔を見て、しんみりとしてしまう。

 コタツに入っているうえに、毛布をかけられ、ちょっと暑そうだったが、家族の愛情をのせられてるみたいで、羨ましかった。

 お嬢さんは必ず、幸せにします、と思ったが、よく考えたら、遥にプロポーズしたわけでもなく、遥が受けてくれたわけでもない。

 この家では、何故か、もう結婚が決まっているていで、話が進んでいるのだが。