好きになれとは言ってない

 




「すみません、課長。
 こんな遅くまで。

 明日もお仕事なのに」

 父親が気持ち良くコタツで寝てしまったあと、遥がペコペコ謝ってくれる。

 そんな遥を、こいつの謝り方は、本当にペコペコって感じだな、と思いながら、眺めていた。

 総務でもこうやって謝っているのだろうか。

 可愛いな、ペコペコ。
としょうもないことを考えていて、一生懸命謝ってくれている遥の話は酔った頭に入らない。

 遥の母親がダイニングテーブルの方に、お茶を出してくれていた。

「すみません。
 あの、お父さん、運びましょうか」
と訊いてみる。

 隆弘を加えても、この中では自分が一番力がある気がする、と思って、そう訊いてみたのだが、みんな、いい、いい、と苦笑いして手を振ってくる。

 遥が、
「下手に触ると起きちゃうから」
と言い、遥の母が、

「今、起きたら、また大変よ。
 みんなが帰ってから、起こすから大丈夫。

 航さんも、お茶でも飲んで。
 代行、来るまで時間かかるみたいだから」
と言ってきた。