好きになれとは言ってない

「……お帰り、ありがと。
 助かった。

 珈琲でも奢るよ」
と言うと、航は、渋い顔をして、メニューを見る。

 珈琲以外がよかったようだ。

「君ら、飲まないよね、此処で珈琲。
 そういうところも似てるよね」
と二人まとめて睨んでやる。

 というか、当たり前のように遥の横に座る航を睨んでやる。

「すみません。
 私、珈琲、ちょっと苦手で。

 あっ、でも、真尋さんが淹れてくれた珈琲は美味しいと思います」

 フォローのように言ってくれる遥の側で航は、
「会社で飲みすぎなんだ。
 此処でまで飲みたくない」
と言い放つ。

「会社の珈琲と此処の珈琲一緒にしないでよ」

 此処は、珈琲専門店っ! と言うと、航はメニューを見、
「じゃあ、珈琲ゼリーで」
と言ってきた。

「じゃあ、私も」
とゼリーなら大丈夫らしい遥が笑う。

「……君らほんと似たもの夫婦だよね」
と言うと、遥が照れ、航は無表情で、他の客は笑っていた。