今のはどういう意味ですか? と思ったのだが、航はさっさと遥の家の階段を上がっていってしまっている。

「か、課長っ。
 もうなんなんですかっ。

 なんでいつも、さわりだけ言ってやめるんですかっ」

 最初と最後も言ってくださいーっ、と思っていると、
「俺はそういう男なんだ。
 真尋のような甘い言葉は期待するな」
と振り向かずに言ってくる。

「なんでこんな人、好きになってしまったんでしょうね……」

 もう、一度言ってしまっているので、遠慮なくそう愚痴ると、航が振り返り口を開こうとしたので、先を読んで言ってやった。

「好きになれとは言ってない」

 航が足を止め、黙り、遥は笑った。

「そういえば、お前、最近、大魔王って呼ばないな」

「え?
 さ、最初から呼んでませんけどっ?」
と誤魔化すように言う足許で、まどかさんが陽気に叫んでいた。

「メリークリスマスッ!

 メリークリスマスッ!


  メリークリスマスッ!」

 少し笑って、遥は言った。