好きになれとは言ってない

 だが、今度はすぐに口を開いた。

「いや、そうだな。
 一人暮らしなんて、物騒だ」
と言い出す。

 いや、あんた、どうしたいんだ、と思っていると、
「嫁に出るまでは家に居るのが、家族にとってもいいような気がするしな」
と言い出した。

「そ、そうですか」

 そこで、また沈黙する。

 そして、また口を開いた。

「いつか、俺に娘が出来たら、娘にそうして欲しいから」

 今度は、いきなり、娘の話になったぞ、と思うと、また黙る。

「あのー、課長」
と溜息をつくと、

「なんだ。
 お前、今、俺のことをめんどくさい奴だと思っただろう」
と言ってくる。

 その通りだ。

 確かに、この人と自分とでは、この先もなかなか話が進みそうにはないな、とは思っていた。

「……なんでこんな人を好きになったのかな、と今、真剣に考えています」
と思わず本音をもらすと、今度は、

「好きになれなんて言ってない」
と言い出す。